その3
「プレコンノート」で、今の自分を知り、将来について考えよう。
将来の妊娠を考えながら自分たちの健康に向き合い、生まれてくるこどもたちの健康にもつながる「プレコンセプションケア」。前回の『知ろう!プレコン』では「プレコン・チェックシート」で、今の自分を振り返ってみました。みなさんはいかがでしたか?プレコンを自分事として捉えるきっかけになったでしょうか。もっと知りたい。取り入れてみたい。少しでもそう感じた方にぜひ読んでほしいのが国立成育医療研究センターが発行する「プレコンノート」です。これを実践の手引きとして、プレコンへの理解をさらに深め、実際のアクションにつなげてみましょう。
「プレコンノート」を持つ意味
将来の妊娠を意識するということは、日々のこころとからだのメンテナンス=ケアにも役立つ。そんな毎日の過ごし方に気づくことができるのが「プレコンノート」だと言えます。からだは毎日、一生懸命に活動しています。そのため、どうしてもからだやこころに悩みは生じるものです。「プレコンノート」を手引きにすることで、自分自身のからだとこころの声をきちんと聴くことができるようになります。そうすることで、将来の妊娠を意識しながら、からだとこころの悩みを軽減し、自分自身でもメンテナンス・ケアができる毎日を過ごせるようになります。
「プレコンノート」の使い方
「プレコンノート」は大きく3部構成になっています。ひとつめは「プレコンを知る」。プレコンが必要な理由や具体的な方法を学びます。ふたつめは「計画を立てて自分を知る」。プレコンを実践するための計画を立てます。みっつめは「行動する」。できるプレコンから行動して、少しずつできる項目を増やしていきます。
プレコンとはどのようなものなのかを知った上で、自分ができることを選び、最後に「プレコン宣言」をすることで、日々の行動に無理なくつなげる内容になっています。それでは、それぞれを詳しく見ていきましょう。
「プレコンを知る」
プレコンノートの前半には、プレコンが必要とされている理由と、プレコンを構成する21の項目がまとめられています。大項目としては「いまの自分を知る」「生活を整える」「検査やワクチンを受ける」「かかりつけ医を持つ」「人生をデザインする」といった5つのアクションに区分けされています。特にプレコンは「いまの自分を知る」ことから始まります。肥満度を表すBMIはもちろん、生物学的なからだの機能と心身への影響、年齢を重ねるごとに発症率が高まる病気などの正しい知識を得られているか、自身の状況と照らしながら確認してみましょう。また、妊娠中は喫煙や飲酒を避けるべき、と聞いたことがある方は多くても、どんなリスクや病気につながるかまで知らない方が多いと思いますが、プレコンノートには、どうしてそのアクションが必要なのか等がしっかりと記載されていますので、ぜひチェックしてみてください。
「計画を立てて、自分を知る」
自分が望む未来や起こりうる出来事を「理想の人生グラフ」としてプレコンノートに描いてみましょう。この時に記載する出来事は、なるべく具体的にイメージすることが大切です。妊娠や出産、育児、介護、転職といった人生の転機はたくさんあります。例えば、高齢の妊娠や出産はお母さんと赤ちゃんの健康リスクが高まります。さらに産後も育児と親の介護が重なる可能性があります。計画を立てるときは、キャリアプランだけでなく、自身と身の回りの将来のことも考慮しましょう。そして、”心身ともに健康である”からこそ、どんな出来事もより良く過ごすことができ、思い描いた未来につなげることができます。「理想の人生グラフ」で未来をイメージするほど、プレコンを自分事として意識できるのではないでしょうか。また、こどものころからプレコンを考えることも、理想の未来へつながります。
また、女性は基礎体温を測って自分のからだのリズムを把握することも大切です。基礎体温とは、生命維持に必要な最小限のエネルギーしか使っていないときの体温のこと。女性はホルモンの影響で基礎体温が変化し、妊娠しやすい時期や妊娠の可能性も予測することができます。起床後寝たままの状態で、舌の裏側の付け根に基礎体温計(婦人体温計)を当てて測定します。基礎体温計は、ドラッグストアや家電量販店、ネットショップなどで販売されており、一般的な体温計より詳細な数値が測定されるため、基礎体温の記録には基礎体温計を使用しましょう。そして、基礎体温を毎日測り、グラフ化しておくことで、自分のからだのリズムを把握することができます。
「行動する」
最後に、プレコンを実践し、記録してみましょう。一度に全ての項目をクリアする必要はありません。実践できそうな項目から取り組み、少しずつ実践できた項目を増やしていきましょう。また、プレコンは一度実践したら終わりではなく、定期的に見直し、繰り返し行うことが重要です。プレコンノートには、適正体重や運動時間、健康診断の結果、かかりつけ医などを書き込むことができます。半年後1年後に、「理想の人生グラフ」と共に見直し、より多くのプレコンアクションを習慣化していきましょう。また、国立成育医療センターでは、今日から取り組むプレコンを宣言し、SNSなどで共有することもおすすめしています。
プレコンノートを使うことで、プレコンをより自分事として意識し、行動して、振り返り、より良い未来を思い描けるようになります。人生100年時代を心身ともに健康で過ごせるよう「プレコンノート」をぜひ活用してみてください。
